木ガラからつくる
アップサイクル和紙
石州和紙の製造過程でその大部分が廃棄・焼却処分される楮ガラを原料とした「木ガラ紙」の開発に取り組んでいます。
〈KiGALA Paper〉
「木ガラ紙」は、石州和紙の製造過程で本来廃棄される楮の木ガラを原料に手漉きの製法で製造されたアップサイクルペーパーです。流し漉きの製法では、混抄率70%・大判(二三判/100×64cm)サイズで中厚手のもから壁紙のような厚手のものまで製作可能です。溜め漉きの製法であれば、名刺や葉書、A3サイズの製紙が可能です。
環境に配慮したモノづくり、再標準化される伝統と価値。
アップサイクル・ペーパー・ブランドである「KiGALA」は、自然由来の素材とその過程においても環境に配慮したモノづくり、現代の生活様式の中で “Re:Standard=再標準化” される伝統と価値の創造を目指して、アップサイクル和紙の開発、また、それに関連するプロダクトの提案を行っています。
きっかけは、職人たちへの深いリスペクトと産地の困りごと。
島根県浜田市にある「西田和紙工房」の七代目、西田誠吉さんから「毎年出る楮ガラの処理に困っている」というお話を伺ったことが、本プロジェクトを始めたきっかけです。かつては炊事や風呂焚きの燃料として近隣の家々に配るなどしていたようですが、生活様式の変化とともに行き場を失った大量のガラの処分に伝統工芸士である職人の手間が取られている状況を見過ごすことはできないと考え、その再利用に向けて動き出しました。
様々な活用方法を模索する中で、国内のアップサイクル活動を支援する「一般社団法人アップサイクル」の助言と協力を得、楮ガラを活用した「木ガラ紙(アップサイクル和紙)」の開発に乗り出しました。手始めに少量の楮ガラをパルプ化し、手漉きによる製紙を行ってみたところ、木ガラ90%以上(ほか10%が本来使用する楮の白皮)を紙料として用いた試作品の製造に成功しました。
あるようでなかった古くて新しい紙素材。
楮の木ガラを用い、手漉き和紙の製法により製造される木GALA紙は、通常の和紙製品に比べ繊維が短くなる分毛羽立ちが少なく、和紙独特の風合いを残しつつも表面は比較的なめらかでツルッとした肌触りが特徴です。これは、木ガラを一旦チップ化・パルプ化した後、石州和紙本来の原料として用いられる楮の白皮で造る紙料を混ぜて製紙を行うためで、洋紙と和紙とを掛け合わせたような仕上がりとなります。インク滲みが少なく、表面加工を施さなくてもそのまま印刷機に通ることなどから、印刷や作画に向いていると考えています。また、通常の和紙に比べて断裁が容易であることなどから、神楽絵などの伝統的な切り絵の素材として使ってみたいというお声も頂いています。
ベーシックな「木GALA紙(生成)」、刷毛塗りによる柿渋染めを後加工で施した「木GALA紙(柿渋)」、紙料自体に鉄媒染による草木染め(玉葱)を行った「木GALA紙(灰鉄)」の3種類の展開を予定しています。原則受注生産のかたちをとっているため、厚みやサイズについてはそれぞれ対応が可能です。混抄率についても要望をお聞きすることが可能ですが、現状は製品強度なども踏まえて楮ガラ70%程度、5匁以上の厚手のものを基本と考えています。工程のほぼ全てを手作業で行っているため、納期についてはある程度の時間を頂いていますが、時期や仕様、ロットによって状況が異なるため、都度ご相談頂くこととしています。
究極の2度手間、それでも取り組む価値がある。
和紙工房で和紙の紙料となる楮(こうぞ)の皮を剥いだ後、本来は廃棄される木ガラを回収し、チップ工場にて適正サイズに断裁、パルプ工場にてパルプ化を行います。それを再び和紙工房に戻し、手漉き和紙と同様の製法で丁寧に紙に仕上げていきます。用途に合わせて様々なサイズ・厚み・色で仕上げた「木ガラ紙」は、そのまま販売しますが、素材としての使用や印刷加工等のご相談にも対応しています。原料の確保・製造に手間を要するため、けっして安価ではありませんが、(通常の和紙と同等の価格設定としています)モノづくりの現場においても環境への配慮が強く求められる昨今、全国の産地で応用可能なこの取り組みは、社会的意義のある活動として多くの方々から共感と応援を頂いています。
活用事例
Cases
| 2024年 素材提供 | 全国4カ所(石垣市・芦屋市・金沢市・東京都渋谷区)で展示された「アップサイクル・クリスマス・ツリー」の素材、オーナメントの一部に「木ガラ紙(生成)」をご活用頂きました。 |
|---|---|
| 2025年 店舗内装(壁紙) | 会津若松市にて新規オープンした「一般社団法人アップサイクル」様のコンセプト・ストア「TSUMUGI」の店舗内装の壁紙として「木ガラ紙(柿渋)」をご採用頂きました。 |
| 2025年 式次第(印刷用紙) | 島根県川本町の「合併70周年記念式典」の式次第(印刷用紙)として「木ガラ紙(生成)」ご採用頂き、オフセット印刷での印刷加工を行いました。 |
| 2025年 素材提供・作品制作 | 名古屋で開催される「FOODBIZ SUMMIT NAGOYA 2025」にて展示予定のアップサイクル・モニュメントの一部に「木ガラ紙(生成)」をご活用頂きました。また、「木ガラ紙(生成)」を用いたアートピースの制作も行いました。 |